2005.1.12配布

 

社会学研究10「社会変動とライフコース」

講義記録(11)

 

●要点「女性の社会進出」

 「女性が社会に進出する」というときの「社会」とは「労働市場」のことである。それまで「共同体」の内部で無償の労働力として家業や家事労働に従事していた女性たちが、賃金労働者として工場やオフィスや店頭で働くようになったのである。背景に産業構造の転換(第一産業第二次産業第三次産業)があることはいうまでもない。

 年齢別に見ると、10代後半の女性は高校・大学への進学率の上昇に伴ってむしろ社会から撤退し(学校への囲い込み)、それに代わって台頭してきたのが20代前半の女性(もはや学生ではなく、いまだ主婦ではない)で、戦後ほぼ一貫して社会進出が続いている。20代後半から30代前半の女性は60年くらいまでは横ばい状態で、60年から75年まではむしろ下降傾向を示したが(専業主婦化)、75年以降、急速な社会進出に転じている。30代後半から50代前半の女性は戦後ほぼ一貫してゆるやかな社会進出を続けている。

 女性の社会進出、とくに75年以降の社会進出は、パートタイム労働者の増加によるところが大きい。オイルショック(1973年)によって高度経済成長期が終わり、低成長の時代に入った企業にとって、安価で雇用調整の利くパートタイム労働者は重宝な労働力であった。一方、子供の教育費や住宅ローンを抱えた家庭の主婦にとって、パートタイム労働は余暇時間を活用して補助的な家計収入を得る都合のよい制度であった。

 その一方で、たんなる家計の補助ではなく、男性同様、仕事を生活の中心と考える女性たちも増えてきた(とくに80年代以降)。「短大を出て、一流企業に一般事務職として就職し、お茶くみ仕事をしながら、職場の男性と恋愛結をして退職し、専業主婦になる」というライフコースは過去のものとなりつつある。そうして趨勢を背景として「男女雇用機会均等法」(1985年)は成立した。その成立過程を、その法案作成に関わった女性たちの視点から描いた『プロジェクトX』「女たちの10年戦争」(2000年12月19日放送)を見た。

 ただし、そうした法案が成立したからといって、人々の意識が急に大きく変わるわけではない。加えて、バブル崩壊後の長期にわたる景気低迷の中で、従来は既婚女性が中心だったパートタイム労働市場に、新卒者が参入してくるという現象が見られるようになった(フリーターの台頭)。

 

*図表は『平成9年版 国民生活白書』より


●質問

Q:男女雇用機会均等法など雇用面の平等化は進んでいますが、女性に代わって男性が家庭に入る「主夫化」現象は見られるのでしょうか。

A:育児休業の取得率を男女で比べてみると、女性では6割(公務員に限定すると9割)ですが、男性では1%未満です(公務員の場合も)。「主夫化」は実在の現象ではない(レアケースの故に話題にはなる)といってよいでしょう。

 

Q:先生はフェミニストですか。

A:『新明解国語辞典』で「フェミニスト」を引くと、「男女同権論者」と「女に甘い男」という二つの意味が載っていますが、どちらの意味でお尋ねなのでしょうか。もっとも、どちらの意味であっても答えは「はい」です。問題は、「女に甘い男女同権論者」というのは自己矛盾ではないかということです。

 

Q:先生は本当にたくさんの曲をご存じのようですが、一体、どのようにして曲をリサーチして入手していらっしゃるのでしょうか。

A:『新版日本流行歌史』全三巻(社会思想社、1994)がデータベースとしてはもっと充実しています。各年のヒットソングを掲載しているインターネット・サイトもあります。ただしこれらは文字情報のみです。音源については、各レコード会社から、『戦前・戦後歌謡大全集』(CD12枚)、『オール・スター青春歌謡』(CD12枚)、『栄光のグループ・サウンズ大全集』(CD9枚)、『永遠のフォーク&ポップス大全集』(CD12枚)といった類の企画商品が売り出されていますので、金にものをいわせて入手しています。

 

●感想

 今日の授業を聞いて、ああ勉強しよう、今しかできないことをしよう!と思いました。★前回の授業から一ヶ月が経過したわけだけど、いまもその気持に変わりはありませんか?

 

 女性にも雇用機会を与えることは大切なことだとは思いますが、最近は「男女平等」という言葉に過敏になっている気がします。男性と女性は本質的にまたく違うものなのですから、その「違い」にも目を向けるべきだと思います。こういうことを言うと「男女差別だ!」って言われそうですけど。★男性と女性が「本質的にまったく違うもの」であるとする根拠は?(「違うところもある」というのならわかりますけど)

 

 昔から仕事を一生続けたいと思っているので、女性が生きづらい日本にいると男に生まれた方がよかった感じることが多々あります。★「生まれ変わることができるなら男女どちらに生まれたいか」という調査をすると、男性の8割が「男」と回答する傾向は昔も今も変わりません。ところが、女性が「女」と回答する割合はだんだん増えてきて、いまは6割くらいになっています。「女に生まれると損」という感覚が弱くなってきたのでしょうか、それとも社会進出する女性が増えて結果、「男の人生も楽じゃなさそう」と感じる女性が増えたのでしょうか。

 

 就活をしていると性差別にしばしば直面します。MRは女子が受かりやすいとか、営業は男子が受かりやすいとか。そういうこともあって、女性の社会進出を促進している企業は多くの女子が志望しているようです。こういうテーマの授業のときに、男子学生の居眠りが多いのもこうした社会のあらわれのような気まします。私の見るところでは居眠りをしている人はテーマと関係なく居眠りをしており、ケータイのメールをいじっている人や、私語をしている人も、同様です。これは高等教育の大衆化の結果です。

 

 就活のとき、「もし女性の社会進出が進んでいなかったら」、「資本主義社会じゃなければ」と、社会が違えばこんな苦労しなかったんじゃないかと思いました。でもきっとどんな社会でも悩みはあって、その上で、どうしたいかを自分で選んで目指せる自由がこの時代にはあって、幸せだなと思いました。★つまるところ現代人のライフコースの二大原理は「職業選択の自由」と「配偶者選択の自由」です。そうした「自由」の中で、無業者や未婚者が増加しているというのが、現代社会のかかえるジレンマです。

 

 1985年生まれでよかった。1954年生まれで悪かったね。

 

 私の母は専業主婦ですが、仕事をしている友人から「外で働かないなんてどうかしている」と言われ、非常にイヤな思いをしたそうです。男社会と戦っているキャリアウーマンにとっては、母のような女は男以上に憎しみの対象となることが多いようです。★「専業主婦バッシング」と呼ぶべき言説がマスコミをにぎわしています。その人もそうした言説の尻馬に乗っているのでしょう。昔、小さな子供を「鍵っ子」にして働きに出た女性たちが「子供がかわいそうだと思わないのか」と言われたのと似ています。どちらも自分の生き方の正当性を他人の生き方を非難することで強調する貧しい手法です。

 官僚たちがカッコいい! 国家公務員目指して勉強している僕にはモチベーションアップになりました。★単純1号、発進します!

 

 感動した。赤松さんにしろ山野さんにしろ、何と力強いのだろうか。私も新年を貫き通す女性として立ちたいです。「よくやった。感動した!」★単純2号、発進します!

 

 私は女子校育ちなので、高校のとき、ジェンダーや女性の権利についていろいろ勉強しました。そのとき先生から、「男子校育ちの男は男女差別が激しいからつき合うんじゃないぞ」と何度も言われました。★どういう論理でそういう結論に至るのか非常に興味深いですね。ちなみに「女子校育ちの女」はどういうことになるんでしょうか。嶋ア尚子先生に聞いてみようかな。

 

 聞いた話ですが、電通という会社の女性社員の9割は面接も職場も電通なのに登録は子会社からの派遣社員という名目で、合法的に給与体系を男女で分けているそうです。また、女性は「顔面採用」で、男性をやる気にさせるための「福利厚生」と考えられているそうです。★日本人の結婚で一番多いのは職場結婚ですが、それは会社が社員に配偶者選択の機会を提供してきた(福利厚生)結果といえるでしょう。

 

 男女雇用機会均等法によってずいぶんと改善されたのだとは思う。しかし今も差別は根強く残っている。面接の中に、一人の女がいて、男の人には志望理由などきちんとした質問をしていたのに、彼女には「好きな食べ物は?」という質問しかしなかったそうだ。ちなみに「トンカツです」と答えたら落ちたらしい。★「男です」と人を食ったような答えをするべきだった。

 

 女性の社会進出は私の卒論のテーマなので興味深かったです。母は大学を出て、私を育てつつ、同期の男の人より何年か遅れて部長になりました。卒論の勉強をしながら母に感謝し、母を尊敬するようになりました。★お〜い、どこかに父親に感謝し、父親を尊敬するようになりそうなテーマで卒論を書こうとしている人はいませんか? 指導引き受けますけど。

 

 この授業ももうすぐ終わりですね。水曜の昼下がりのこの授業は毎週楽しみにしていました。これから水曜の昼下がりに何をしたらよいのかまったくわかりません。★講義記録をながめながら思い出にひたって下さい。

 

 

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