2005.1.19配布

 

社会学研究10「社会変動とライフコース」

講義記録(12)

 

●要点「ライフコースと時間」

 われわれが日々の生活をしていく上で、携帯時計とスケジュール帳はなくてはならないものである。われわれが一日に何度もいまが何時何分であるかを確認したり、来週や再来週の予定を確認したりする。「約束の時間」や「締切日」は個人の外部に存在して個人の行動を拘束する社会的事実である。

 スケジュール帳に記入された行動の多くは「しなくてはならないこと」である。われわれは往々にして「しなくてはならないこと」に追われて、それをこなすのに精一杯という生活をしている。「したいこと」は「いつかしよう」「そのうちしよう」とどんどん先送りされ、いつか忘れられてしまう。そうならないためにはライフプランニングが必要なのである。

 われわれは未来志向的な社会(成功や幸福を将来の目標に設定し、その実現に向けて日々努力する社会)に生きている。元来、日本の土着の世界観は現在志向的であったが、それは明治期に西洋から輸入された近代版「人生の物語」が普及していく過程で背後に退いていった。

 しかし、高度成長の終焉(生産社会から消費社会・余暇社会へ)と高齢化の到来によって、現在志向、さらには過去志向が台頭してきた。がむしゃらに働くことから解放された人々や、人生の残り時間の少ないことを自覚する人々は、目の前の風景や過ぎ去った日々の思い出に関心を向けるようになる。

 さらにバブル崩壊以後の長期化する景気の低迷の中で、将来に希望をもてる人ともてない人の二極分化が生じ(山田昌弘のいう「希望格差社会」の出現)、未来志向を放棄した現在志向的(というよりもむしろ刹那的)な生き方や、(その典型は恋愛至上主義である)、高度成長期を「旧き良き時代」として振り返ることが社会的なブームとなっている。

アニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!大人帝国の逆襲』(2001年)は、日本社会を20世紀に逆戻りさせようとする秘密組織「イエスタディ・ワンス・モア」としんちゃん一家が戦う物語であるが、そこでは「家族」が未来志向を取り戻すための契機となっている。しかし、現実の社会では結婚しない人々や、子どももたない人々が増えている。映画のように「家族」が未来志向の契機となりえるかどうかは定かではない。「家族」の行方は社会の行方でもある。


●感想

 無事卒論が通り、テストも無事通ったら、本日が私の大学時代の最後の「教室で受ける授業」になります。ちょっとせつなかったです。★ペギー葉山の名曲「学生時代」の気分でしょうか。

 

今日の授業を私を振った男に受けさせてたい(はぁ・・・)。★覆水盆に返らず。

 

 就活を始めて腕時計と手帳の必要性を改めて感じていただけに、今日の講義はとってもリアリティーがありました。★手帳やカレンダーの売り出される時期がだんだん早くなっている。9月にはもう店頭に並んでいるし、買ってすぐ使えるように10月始まりの手帳も登場した。

 

 私も暇が嫌いなので、手帳に空白があったら隙間なく埋めてしまいたがります。私は時刻まで書いてあるタイプの手帳が好きで、いつもそれを使っているのですが、今年は24時間の区切りがあるものを買ったので、寝る時間が・・・・(笑い)。一昔前、「24時間働けますか」という栄養ドリンク(リゲイン)のCMがあったけど、「24時間埋められますか」だね。

 

 余白を埋めたいというのはまさしくそう思いました。ヒマなことが不安、というか予定がないとさびしい、という感覚があります。★メールも入っていないとさびしいですか。社会や他者とのつながりが人間には必要なのでしょう。

 

 自分のやりたいことを見つけるため、手帳を捨ててみようと思う。★宿泊客から腕時計を取り上げる旅館があると聞いた。時間を忘れてゆったりとした気分で過ごしてもらうためだそうだ。

 

 映画で両親を過去志向から救った「家族」。でも、子どもが起きている時間に帰宅できる夫が、玄関まで迎えに来てくれる妻が、今どのくらいいるのだろう。不安が残った。★「子どもが起きている間に帰宅できる夫」はたくさんいますが(私がそうでしたから)、「玄関まで迎えに来てくれる妻」はすでに地上から絶滅したと聞いています。

 

 先生、「クレヨンしんちゃん」をみても今日の私は笑えませんでした。今、まさに今日の授業内容に似たことで、自分がもがいているからです。自分は、女は家庭で、男は外で働くといったような古きよき時代の家庭が理想でありながら、結局は、仕事で認められ、社会的なことで評価されたい。まさに未来志向型100%の自分です。今日の授業は非常に重かったです。変動のスピードの速い社会では、子どもは親たちのようには生きられない。

 

 ネットの映画評の掲示板で、近年の「クレヨンしんちゃん」は往年の「ドラえもん」に匹敵するということが盛んに言われていましたが、今日見て本当だなと思いました。先生は一体どこからこんな映画の情報を収集しているのですか。★『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!大人帝国の逆襲』を観るように私に勧めてくれたのは、演劇映像専修の武田先生です。

 

 横浜にあるラーメン博物館も「クレヨンしんちゃん」の20世紀博のように懐かしい世界を再現しています。戻りたいという思いを抱いている人が多いということだと思いました。九段下の駅の側に「昭和館」という戦中・戦後復興期(高度成長期前)の日本人の生活を物語る資料を展示している施設があります。入場料は大学生は150円です。

 

 子どもの教育に悪いと言われていた「クレヨンしんちゃん」が社会学の教材になったことに単純に驚きました。また、先生が「クレヨンしんちゃん」を見ていたことにも驚きました。★いま考えているのは「爆笑オンエアバトル」を教材に使えないかということ。

 

 僕の親は「トトロ」を見ると非常に懐かしいらしく、「あの頃はよかったなあ」と口走ります。僕の世代もいつかそんな風になるのでしょうか。★間違いない。

 

 偶然、昨日「クレヨンしんちゃん」の最新作をレンタルで見ました。相変わらずノスタルジックで、ある意味怖い映画でした。子ども用の映画ではないですね。★それは『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕日のカスカベボーイズ』(2004年)のことですね。

 

 「クレヨンしんちゃん」面白かったです。でも借りるのが恥ずかしいです。★おかしいな、私は全然恥ずかしくなかったのだが。私はどちらかというと、若者に人気のある歌手のCDを借りるときの方が恥ずかしい。でも、たくさん借りてますけどね。お仕事、お仕事。

 

 それにしても夕焼けは不思議だ。どうしてあの昼と夜の中間が人を切なくさせるのだろう。★「夕暮れは淡い酸だ」と川崎洋という詩人が言っていた。

 

 高校生の頃や小学生の頃に帰りたいとときどき思います。今を生きるんだ!★ロビン・ウィリアムズ主演の『いまを生きる』(1989)という映画、観たことありますか?

 

22世紀まで生きたいです。★冷凍保存の技術を使えば可能でしょう。でも、それは「生きている」ことにはならないだろうけど。

 

 早く結婚相手を見つけて、家族をつくり、日本の未来を支えます。単純3号より。★二号さんをつくってはいけないよ。

 

 浦沢直樹の「20世紀少年」という漫画を思い出しました。万博の頃の少年たちの現在の話です。その頃の風景を生きていなかった私たちの世代が見てもなんとなく懐かしさを感じるのは、親世代やメディアの影響なのでしょうか。時代劇を見ても懐かしいとは思わないよね。懐かしさの分水嶺はどの辺にあるのだろう。

 

私の年齢は懐かしい下町の匂いがわかるギリギリの年齢だと思います。もしかしたらもっと懐かしい匂いがあるのかもしれませんが、ニュアンスはわかります。中3の妹にはわからないと思います。★耳鼻科に行かなくては。

 

 重松清の『トワイライト』にも同じ匂いを感じました。★だったらおそらく浅田次郎や奥田英郎にも感じるでしょう。

 

 過去志向的生活が一番安上がりではないでしょうか。★いえいえ、そうとは限らない。アンティークな家具ってけっこう高いです。

 

 母親の「リリアン」で猛烈な兄妹ゲンカをしたことがあります。懐かしい「リリアン」。★「リリアン」とは、プラスチック製の小さな編み機を使って蜘蛛の巣のように糸を掛けていくと「組み紐」ができあがるという女の子の遊びです。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!リリンアンで兄妹ゲンカ』という映画もありました(嘘)。

 

 今日で3回目です。この授業で涙がでたのは。★次回も泣くかもしれない。試験問題が難しくて。

 

 

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