2004.11.10配布

 

社会学研究10「社会変動とライフコース」

講義記録(5)

 

●要点「三種の神器の時代」

 1960年代、すなわち高度成長の最中、「三種の神器」と呼ばれる家電製品が日本中の家庭に急速に普及した。電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビ(当初は電気掃除機)である(図)。急速な普及は、(1)技術革新と大量生産による価格の低下、(2)雇用の安定と所得の上昇、(3)月賦という支払い方法(将来の収入を担保にして商品を購入し、代金を分割して支払っていく方法)の普及、などによる。家の中に、1つ、また1つと家電製品が増えていくことは、前回の授業でとりあげた住宅と同様、人々が自分たちの生活水準が上昇していることを実感するための確かな指標となった。

 NHKのテレビ番組「プロジェクトX」は、戦後の日本社会の「成功の物語」秘話という性格をもっているが、乗用車、白黒テレビ、電気冷蔵庫、電気炊飯器、VTR(VHS方式)、ビデオカメラ、ワープロ、といった耐久消費財の開発の物語は番組の主要なテーマの1つとなっている。授業ではその中から電気洗濯機の開発の物語「家電元年 最強営業マン立つ」を見た。物語は、家庭用電気洗濯機の開発と普及に努力する男たち(サラリーマン)と、電気洗濯機を必要としている女たち(主婦)という構図で展開されていたが、三種の神器の時代とは、サラリーマンと主婦の時代であり、言い換えれば、企業(耐久消費財の生産セクター)と家庭(耐久消費在の消費セクター)が非常に強固に連結していた時代であった。

この時代、家庭に三種の神器があったように、職場(企業)にも三種の神器(日本的経営の特徴)があった。終身雇用、年功序列、企業内組合である。終身雇用とは定年までの安定した雇用が保証されていること、年功序列とは地位と給与の上昇が年齢(入社からの年数)を土台にしていることを指す。どちらも学校卒業と同時に一括採用した男子社員を長期にわたって会社に止まらせるものである(女子社員は結婚で会社を辞めることを期待されていたが、職場結婚が多かったので、退職後も社員の妻として会社と長期のかかわりをもつことになった)。企業内組合は、企業との対決色の強い企業間組合(同じ職種に従事している労働者が企業横断的に作る組合)とは違って、労使協調路線となりやすい。終身雇用、年功序列、企業内組合の三種の神器は、高度成長の果実を企業とサラリーマンが仲良く分け合うための装置であったということができる。

 注:図の出典は「平成7年版 国民生活白書」

 

●質問

Q:なぜ終身雇用や年功序列が戦後の日本で定着したのでしょうか。

A:景気がよかったから、労働力が持続的に必要とされており、企業は新卒で一括採用し、一人前に鍛え上げた男性社員に逃げられたくなかったのです。それで一つ所に長期間勤めることのメリットを強調する制度が出現したのです。

 

Q:企業と対立する労働組合は三井三池闘争後衰退し、企業内組合の性格を強めていったと説明がありましたが、いまでもたまに鉄道やバス会社でストライキがあります。これらのストは昔ながらの労組の性格を引きずっているといえますか。

A:はい、国労(国鉄労働組合)と中核派というように、新左翼の政治団体と結びつている労働組合は昔ながらのストライキ闘争を継続しているようです。

 

Q:世帯ではなく個人単位で主要耐久消費財の普及率を示した統計というのはないのですか。

A:「単身世帯消費動向調査」というのがあります。インターネットで調査結果をみることができます。

 

Q:家電が女性を家事から解放し、社会進出させる要因になったのですね。

A:同時に、専業主婦というライフスタイルの魅力を高める要因にもなったかもしれません(俗にいう「三食昼寝付き」)。

 

Q:人生にはいろいろな物語がありますが、先生の知っている物語はいくつくらいあるのですか。

A:ざっと数えて800はありますね(嘘八百)。

 

Q:先生は10万円あったら何に使いますか。

A:あったらというよりも、実際にあるけど、本代と食事代で消えます。

 

●感想

洗濯機がずっと壊れたままです。★ヒロシです。

 

私は一人暮らしをしていて洗濯機のありがたさが身にしみました。しかし若干壊れ気味で脱水する時にものすごい音と振動がします。いや、でも今日のビデオを見て洗濯機があるだけで・・・・と思います。★ヒロコです。

 

私の祖母は7人きょうだいの長男だった祖父の家に嫁いできた人です。洗濯機が家に来たときはすごく嬉しかっただろうな。★思わず「ヨッシャー」と叫んだことでしょう(アメリカの主婦なら「ウォッシャー」と言う)。

 

老人ホーム実習で老人に「あんたの手は何もしてない手だねー」と言われました。つくづくいい時代に生まれたと思います。ちょっと情けなく思いますが。★「いえ、これからあなたの肩を揉む手です」と言わなくちゃ。

 

金、愛、時間、これが私の三種の神器。★この順番なのだろうか?

 

僕の三種の神器は愛と勇気とお金です。★愛とお金は衆目の一致するところみたいだね。するとあと1つを何と考えるかでその人の人生観がわかるわけだ。私なら健康と答える。

 

 三種の神器を手に入れた。しかし呪われていた。★そして仁義なき戦いが始まった。

 

デジカメ、DVDレコーダー、薄型テレビが現代の三種の神器と呼ばれているそうです。★神さまの地位もずいぶんと低くなったものです。デジカメとDVDレコーダーはもっていますが、薄型テレビはウチにはありません。

 

パソコンが意外に普及していないのでびっくりしました。★勘違いしないで下さい。配布した資料は戦後50年目の平成7年(1995年)までのものです。インターネットや電子メールの普及でパソコンが一般世帯に普及するのは1990年代後半からで、2004年3月現在のパソコンの普及率は66%です。ちなみに電子レンジの普及率が97%までいっています。(消費動向調査)

 

数年前のことですが、父が母の誕生日にめずらしくプレゼントをするということで母は楽しみにしていたのに、届いたのは洗濯機で母はショックのあまりあきれて、しばらくすると怒りに変わり、涙まで流してました。★夫と妻の意識は30年ずれてますね。

 

奥さんのために洗濯機を作ってくれるような人と結婚したいな。★文学部の男では駄目ってことだね。

 

 仕事に熱心な人ってかっこいいと思いました。そんな人と結婚したい。★君はきっと職場結婚をする。間違いない。

 

私は滋賀県の瀬田の出身なのですが、三洋電機瀬田工場には小学校のとき見学に行ったことがあります。懐かしいなぁ。あそこが日本の家電の普及に貢献したというのは地元民にとって嬉しいことです。★当地では洗濯機のことを瀬田機と呼ぶ(らしい?)。

 

三洋電機の工場は私の実家のすぐ近くです(自転車で15分ほど)。自分の身近で日本の家庭に革命を起こしたプロジェクトが行われていたことに驚きました。その工場も夜中のネオンサインが消えて久しいです。★上の人とは知り合いですか?

 

私の祖父は郵便局の局長をしていたときに、労働組合にずいぶん苦しめられたそうです。お金をごまかしているだのなんだのといちゃもんをつけられ、苦労したんだよと、この間話してくれました。今の私にはなかなか想像のつかない話です。★全逓(全逓信労働組合)ですね。一般に公務員の労働組合は闘争的です。思想信条を理由に首を切られることがないから。

 

最近では私たち大学生でもカードでお買い物をする人が増えていますが、これは大学生もアルバイトで一定の収入があるからなのでしょうか。小心者の私はPADDY CARD機能を一回も使ったことがないのですが。★大学生にもカードが発行されるのは、いざとなったら親から取り立てができるからです。

 

僕は最近毎日のように「どこかにビジネスチャンスがどこかにないかなー」と考えながら生活しています。そんな僕にとって井植さんの言葉は心に響きました。僕がいま一番作ったら儲かると思うものは「手を使わないでもさせる傘」です。★本気なのだろうか・・・・ヘキサゴン!

 

洗濯物をたたんでくれるところまでやってくれる洗濯機を作ってくれないかなぁ。★進歩とは堕落の同義語である。

 

VTRを見て「伝説の営業マン」と行って創業者を崇拝したり社員みんなが消費者のために一生懸命働くところはとてもいかがわしいと思いました。都合よく編集しすぎ?★編集とは物語化である。

 

僕はいずれプロジェクトXに出る男です。★道は二つある。ゲストとして出る。司会者として出る。NHKに就職して後者の道を進んだらどうだろう。

 

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