2004.7.7

 

社会学研究9「社会構造とライフコース」

講義記録(12)

 

●要点「ライフイベントの浮沈効果」

 放送大学の学生約1000名を対象に行ったアンケート調査をもとにライフイベントの浮沈効果について話をした。この調査では、約50のライフイベントのリストを提示し、「最近5年間に経験したことがあるもの」に○印をつけてもらい、○印のついたライフイベントについて「+3(非常に嬉しかった)」から「−3(非常につらかった)」までの7段階尺度で評定してもらい、個々のライフイベントの浮沈効果の平均値を算出した(大久保孝治・嶋ア尚子『ライフコース論』日本放送出版協会、1995年)。

 プラスの効果の最大のものは「子供の誕生」(+2.41)で、マイナス効果の最大のものは「子供の死」(−2.71)であったが、一般に、役割取得を伴うライフイベントはプラスの効果があり、役割喪失を伴うライフイベントにはマイナスの効果がある。人間は社会という舞台の中で何らかの役割行動を通じて他者とかかわり、自己を呈示していく存在であるから、これは当然だといえよう。とくに家族役割の取得と喪失には大きなプラス効果と大きなマイナス効果が伴う。家族は「幸福の物語」の源泉であると同時に、そうであるからこそ、「不幸の物語」の源泉にもなりえるのである。

 家族役割の取得や喪失を伴うライフイベントの浮沈効果を男女別に見てみると、「子供の誕生」は男性の場合の方がプラス効果が大きいことがわかる(男性+2.69、女性+2.30)。意外な結果のように見えるかもしれないが、どのようなライフイベントも純粋にプラスの効果だけ、あるいはマイナスの効果だけを有するわけでない。女性の場合、「子供の誕生」は自由な時間の減少や、育児の負担や、退職といったマイナス効果を伴いがちである。また、家族の死のマイナス効果は総じて女性の方が男性よりも大きい。これは女性における家族役割の重要性を反映していると考えられると同時に、悲しみの表出のジェンダー差であるとも考えられる。

 女性に関して、ライフイベントの浮沈効果を年齢別に見ると、「恋愛」のプラス効果は経験年齢の上昇とともに大きくなる傾向があり(一種のラストチャンス・シンドローム効果か)、「ペットの死」のマイナス効果は20代女性と50代女性で高くなっている(未婚女性とエンプティネストの女性にとって、ペットが子供の代替物となっていることを示唆する)。


●質問

Q:日本ではニールのように社会保障を受けながら働かずに生活できますか。

A:働ける能力がある場合はダメです。でも「あくせく働かずに生活する」ことならできますよ。本人が言っているのだから間違いない。

 

Q:先生ご自身の人生は「成功した人生」と言えるものですか。

A:ニールの言葉を借りれば、「人生はまだ終わっていません」。

 

●感想

 「ペットの死」が「友人の死」よりマイナスの値が大きいのは驚きです。私はハムスターしか飼ったことがないのでよくわからないのかもしれません。犬とかを考えるとありそうですね。★毎朝、ハムエッグばかり食べている人には余計にわからないでしょうね(って、意味がわからない)。

 

 「母親の死」が「父親の死」よりもマイナスの値が大きいことにびっくりしました。世の中のお父さんにとっては切ないですね。★しょうがないです。母子密着社会ですから。

 

 「父親の死」より「失恋」の方がマイナス効果が大きいのが気になりました。★家族の死の場合、それを何歳のときのものであるかが問題なんです。早すぎる死であれば当然マイナス効果は大きくなりますが、天寿をまっとうした死であれば悲しみは緩和されるでしょう。

 

 年を取るほど恋が楽しくなるんですね。二十歳過ぎてもがんばります!★最近の映画で、ダイアン・キートン主演の『恋愛適齢期』というのがあった。チャッチコピーは「なぜ、年齢(とし)が恥ずかしいの?」だった。

 

 結婚するまであと何回くらい恋愛できるんだろうと思うと、少しさびしくなります。中高生時代にもっと遊ぶべきでした。★大丈夫、結婚後も恋愛のチャンスはありますから。

 

 私は16,7歳の頃から母親に「早く孫の顔が見たい」と言われ、理由を尋ねたら「責任がないから」と一言返されました。今日、その意味がわかりました。★世の中には無責任な母親っていうのもいますけどね。

 

 プラス・マイナス・ゼロの生き方がしたい。★阿佐田哲也の『麻雀放浪記』の主人公みたいだ。

 

 配布された表や図からさまざまなことが読み取れることに感心した。★感心されちゃった。

 

 ジャッキーたち3人が現在を語っている姿はなんだか一所懸命に自己弁護というか自己肯定をしているように見えました。何故だかわかりませんが、自分もそんなふうにして生きていくような気がして、悲しい・・・・。★人間は基本的に自分の生きてきた人生を肯定的に語るものです。それは人間の自己イメージが基本的にプラスの状態に保たれているのと関連しています。そうでないと辛いですよ、人生は。

 

 ニールが言っていた。「女性に対して優しさは与えられるが、頼りになる男性にはなれないかもしれない」。今の僕はそんな状況です。彼女は僕の優しさにひかれたみたいですが、これからどうなるのか・・・・。★おのろけですか。

 

 ニールの考えていることが僕の考えていることとても似ていて、怖くなりました。彼に対する残酷な質問は、自分に対して問われているような気もしました。★ニールに似〜る。

 

 ニールには共感する部分がけっこうありました。何か一つだけ秀でた才能があれば本当に幸せなんだろうなあと感じました。でもこんなことを考えているということが凡人ってことなんだろうなあ・・・・。★いやいや、「何か一つだけ秀でた才能」の持ち主というのは、社会的に不適応な人が多いように思うけど。たぶん周囲がその人を「奇人」として扱うからでしょう。

 

 自分が35歳になったとき何をしているんだろうと不安になりました。でも、どんな35歳になるかは自分次第ですよね。★社会学的には必ずしもそうはいえない。何しろ相互作用だから。相手次第という面もある。

 

 夢を語る過去の自分の姿を見ることは非常につらいものがあると思いました。とくに夢がかなわなくて人生において妥協をした人にとっては残酷だと思いました。★それでも人は夢を語りつづけるだろう。

 

 幼い頃は「絶対22、3歳までに結婚して若いお母さんになる」と思ってたけど、今は結婚しなくてもいいやという考えに変わった。19歳で結婚とか、考えられない。★その考えもやがて変わるときがくるのでは。39歳で独身とか、考えられない・・・・とか。

 

 僕はいま人生について軽く悩んでいましたが、VTRでいろいろな人生を送っている人たちを見て何だか安心しました。僕はいまただ沈んでいる時期なのだと思いました。★そうね。問題はどこまで沈むかです。

 

 番組の最後の「未来は子供の中にある」という言葉はグッときました。★子供は社会によって作られるが、その子供たちが社会を作るのである。

 

 半年間ありがとうございました。来月からアメリカ、ポートランドに一年間留学します。社会学に非常に興味が出たので、アメリカの大学でも選択しました。来年の後期に「研究10」を取りますので、よろしくお願いします。★元気で行ってらっしゃい。未来は君の中にある。

 

 七夕なのでお願い事を書きます。素敵な人と巡り会えますように。★出席カードは短冊ではありません。

 

今日は七夕。背が伸びますように。字が上手くなりますように。美人になりますように。社会学研究9のテストで良い成績がとりますように。★しょうがないなあ・・・・。せめて短冊一枚に願い事は一つにしようね。

 

 

  次回は教場試験です。

  問題は小問(語句の説明)5題(各10点)と大問(論述式)1題(50点)の計100点満点です。60点以上を合格とします。

  持ち込みは不可です。